というわけで、このＣＤを聞いた感想を述べてみよう。
田中氏はカルカッタでの修行依頼、シタールの本道としての北インド古典音楽を 極めつづけている。シタールといえば、空中浮遊、断食、３年間土に埋められる等過酷な修行がつきものだと言われている。（本人は黙して語らないが） その結果たどりついたインド哲学を楽器を通して我々極東の庶民へ伝えてくれている。
しかしながら、田中氏のもうひとつの顔、ポップでごきげんな面を表したのがこのアルバムである。すべてオリジナルの各曲は田中氏の作曲家としての懐の深さを思い知らされる。 エレキベース、ドラムスをバックのファンキーなフュージョンサウンドで ドライブすれば、ガンガーの風はさわやかに吹き、夕日をバックに沐浴する人々の深刻そうな顔さえも思わずゆるみそうである。 また、琴、尺八との深淵な世界では、各地の仕事人達のこだわりの食材で特別につくった「カレーうどん」を目の前にした新鮮で崇高な驚きを感じられる。
最近インドのソフトウエア産業の発展は目を見張るものがあり、日本の情報産業への インド人の進出はもはやあたりまえとなってきている。 そのふるさと、「インドのシリコンバレー」といわれるバンガロールのオフィスの昼休み、社員食堂のＡ定食・スパカレーを食べている人々に、このアルバムがＢＧＭとして 流れていればそれもまたベストマッチなのである。
なお、ふたりだけでがっぷり４つに組んだライブをやりたいと企画されたこの日のライブ、田中氏のアルバムからの曲が中心ではあったが、こちらはふたりの即興演奏力をおもいっきり思い知らせてくれたのであった。