遥かなるブエノスアイレス発　哀愁と情熱の旅 アルゼンチンタンゴ 小川紀美代（バンドネオン）　岡本博文（ギター）　荒玉哲朗（ベース） 2005年5月26日

タンゴ豆知識 コンチネンタルタンゴとアルゼンチンタンゴ コンチネンタルタンゴはオーケストラ編成で演奏されることが多く、社交ダンスもコンチネンタルです。 アルゼンチンタンゴはバンドネオンを中心とした数人のグループで演奏されます。 知り合いの社交ダンスをやっている方に聞いたら、アルゼンチンタンゴでは踊れないそうです。 バンドネオン １９世紀にドイツのハインリッヒ・バンドが発明した蛇腹楽器。アコーディオンの一種。 最初はヨーロッパの教会で持ち運び用オルガンとして使われていましたが、１９世紀末にアルゼンチンへ輸出されてから，タンゴで使われるようになりました。 左右のボタンを押して音をだしますが、音階の並びがバラバラなので、覚えるのが大変だそうです。 巨匠アストル・ピアソラの作品により、近年、さまざまな音楽家より注目されているタンゴ。西洋クラシック、ジャズ等の演奏家にも取り上げられ、耳にすることは非常に多い。 ただ、バンドネオンをメインとする純粋タンゴのライブはＴＥＮ−ＯＮでははじめてである。 もともとピアニストとして仕事をしていた小川紀美代はバンドネオンの習得に一念発起し、まずは独学で始め、アルゼンチンへ渡って奏法をマスターしたそうである。 この日の聴衆はまた格別。最前列には、タンゴ歴半世紀以上、人生の大ベテランといえる紳士・淑女の皆様方がズラリ。中には開演３時間前に到着したご婦人もあり、このコアなジャンルの歴史を深く思い知らされる。 しかし、バンドネオンを間近で聴くのははじめてという方も多く混ざる。 途中、楽器や曲の説明をはさみながら、小川を中心として、アルゼンチンのポピュラーな楽曲が次々と披露される。 タンゴ、あるいはバンドネオンでは、全くアドリブをやらない奏者と、アドリブを交える奏者とが区別されるそうである。小川の場合、非常にモダンなフレーズを持つアドリブが各曲に挿入される。 また、タンゴのコンボではギターがはいる場合がよくあるが、フルアコを使用したスッキリとしたリズムでの参加が多いように思う。フォルクローレに精通する岡本はナイロン弦を使用し、粘っこいグルーヴを送る。ボトムを重厚に支える荒玉とのアンサンブルにより、このユニット独特の熱気とテンションが現れているように感じられた。 歯切れ良くも重厚な演奏は完成度たっぷり。小川曰く「タンゴは赤と黒のイメージ」その通り、官能の世界に大きく引き込まれた特別なひとときであった。