「足立兄弟」１年ぶりのﾗｲﾌﾞである。

そもそもＴＥＮ−ＯＮのﾗｲﾌﾞの雰囲気は独特なものがあるといわれている。飲食無し、至近距離の演奏を聞き、見つめるしかすることが無い、故に演奏者も聞く側も修行状態となる会場ｾｯﾃｨﾝｸﾞのせいもあろう。もうひとつ、普段はﾗｲﾌﾞ会場などにはめったに行かない、買い物帰りの近所のおっちゃん、おばちゃんがかなりの比率で混ざるという特殊な客層のせいもあるかもしれない。

しかし、今夜のお客さんは全員ギタリストである。

「足立兄弟」といえば、伝統的ブリティッシュ・プログレッシブロックを基調にしたオリジナル曲をナイロン弦ギター２本で異常ともいえるスピードで弾くというスタイルで知られている。楽曲は極度に完成されており、即興部分はごくわずかである。彼らの曲を譜面にすれば、（譜面は使わないそうだが）転調、強弱記号、拍子の変更、場面転換、ノイズ記号などが山盛り指定されるであろう。この譜面を教材にすると、赤ペン先生にチェックされまくりそうである。

そのような複雑な曲に混ざって、「PUSH ME INTO TORNADE」などは、最初から最後まで休符無しで複音を16分音符で弾くという力技の曲である。肉体系担当のお兄さんの龍介氏のタオルは汗がしぼれそうである。

ＮＹヤンキースにロジャー・クレメンスという３００勝投手がおり、４０歳をすぎても160ｋｍの速球を投げるということである。龍介氏は５０代である。そのｷﾞﾀｰ奏法を球速にたとえると、やはり160kmという数字は誇張では無い。しかも「最近ｽﾋﾟｰﾄﾞが出てきた」という話である。尋常ではない。世の中の疲れたおじさん方に聞かせてあげたい話である。

この「足立兄弟」、ギタリストなら是非ライブを目にしていただきたい。ＴＥＮ−ＯＮでのライブも是非、高齢になっても恒例（失礼！）にしていきたいものである。

昨年のライブの様子